「あなたはわたしを愛していますか」	井上 慎治　牧師
	ヨハネの福音書２１章１節〜１９節
I. 上手くいかないペテロ（1-14節） 　復活のイエスと二度会った弟子たちのうち、ペテロを含める数人は、イエスと出会う前の生活に戻 り ティベリア湖畔で漁をしていました。 イエスに従った三年間の結末は、イエスを見捨てるという大 失敗であり、特にペテロはイエスを三度否定するという大きな挫折を経験しました。 ペテロは、イエスの復活を喜びましたが、しかしまだ挫折から立ち直れていません。 ペテロは漁に出 ますが、もともとプ ロであった漁師としてもまるで上手くいきませんでした。 　夜明け近く、イエスが岸辺から弟子たちに呼びかけます。 イエスだと気づかない弟子たちに、イエ スは「舟の右側に網を打ちなさい」と呼びかけ、弟子たちが従ったところ、舟が転覆しそうなほどの 大漁となりました。　 　かつて「人間をとる漁師」に召されたときにも同様のことがあり (ルカ 5:4-7)、ヨハネがイエスだと 気づき、ペテロに伝えます。ペテロもイエスだと気づき、上着を着て飛び込み、岸辺まで泳いで行った のです。 そして弟子たちは、捕れたばかりの魚でイエスと朝食を共にしたのです。 II. ペテロへの新しい招き（15-19 節） 　イエスは、立ち直れないペテロの内面に切り込みます。 イエスは三度、「ヨハネの子シモン。あなた はわたしを愛していますか。」と問いかけますが、イエスは回を重ねるごとに要求度を下げて、ペテロ に歩み寄ります。 ペテロが、イエスとの関係と友情の一切を、段階的に否定したことを、三度の愛の ことばに変えさせることで、挫折から立ち上がらせようとしています。 　イエスは、「子羊」「羊」すなわちキリストを信じる人々、その集まりである教会を牧する新たな使 命をペテロに与えます。 それは、自己実現や我欲の達成のためではなく、キリストに従う道です。 イエスは再び、「わたしに従いなさい」と挫折したペテロを招いています。 　人間、誰しも失敗するものです。大切なことは、失敗が自分の蒔いたものの結果であり、しかしそこ に神の取り扱いがあると認め、自分を謙遜に見つめ直し、そこからどう立ち上がるか、でしょう。 自分に失望し、挫折する。それは、イエス・キリストにではなく、ただ自分に信頼していたことが明ら かになったというだけです。 自分への期待や信頼が粉々にされるからこそ、キリストに信頼し、聖霊 によって生きる器となり得ます。人間、失敗してからが一番大事。そのことを、挫折してやっと等身大 の自分でキリストの前に出ることができたペテロの姿と、そんなペテロだからこそ受け入れたイエス の愛に教えられます。